《土着権力の研究》 茨城県 山口武平
議員引退後も影響力保つ「ドン」
2012年3月号
茨城県には飛び抜けた土地はない。県庁所在地こそ水戸だが、工業都市である日立や、学園都市のつくばなど、機能が分散している。こう言うと聞こえがいいが、悪く言えば特徴がない中規模都市が並ぶだけ。北関東に位置するが、地域によっては東北の影響さえ感じさせる土地柄だ。
御多分に漏れず、かつては「保守王国」だった。そしてこの特徴のない土地で飛び抜けた権力を持ち長年君臨し続けたのが、一介の県議だった山口武平だ。二〇一〇年の県議選に出馬せず一線を退き、現在は自民党県連最高顧問という肩書を持つ山口だが、九十という年齢ながら、その影響力はいまだ衰えてはいない。
一九二一年(大正十年)に神大実村(現・坂東市)で生まれた山口は、県立水海道中学(現・水海道一高)を卒業後、秋田大学の前身である秋田鉱山専門学校に進む。その後日立製作所で勤務したのちに、地元に戻り、五五年に県議選に無所属で立候補し当選した。そこから一昨年まで実に五十五年、通算十・・・