ミャンマーの民主化は本物か
「スーチー入閣」に現実味
2012年3月号
「彼女は副大統領だ」「いや、さすがにそこまでは無理だろう。与野党の中立的立場の上院議長ではないか」
ミャンマー最大都市ヤンゴンの地元紙記者の間では今、そんな会話が交わされている。
この「彼女」とは民主化勢力指導者、アウンサン・スーチー氏のこと。ミャンマー国内ではスーチー氏が立候補している四月一日投票の議会補欠選挙を前に、「スーチー氏が当選後、テインセイン政権の閣僚に起用される」との観測が飛び交っているのだ。
テインセイン大統領は最近の外国メディアのインタビューに「彼女が当選し議会が閣僚に任命すれば、受け入れる」と含みを持たせている。そして一方のスーチー氏自身も、「公式な要請があったわけではない」と明言を避けており、否定をしない。
ミャンマー情勢は日本でも盛んに伝えられている通り、急速に民主化の道を歩み始めている。軍事政権と民主化勢力との激しい対立から転換したどころか、政権側からスーチー氏にラブコールを送るという一年前には想像もつかなかった状況なのだ。昨年後半の政治犯釈放から始まった動きは、ここにきて加速している。果たしてこの民主化は本物なのか。