《企業研究》 キヤノン
急下降し始めた「御手洗経営」
2012年2月号
年賀状印刷のための家庭用インクジェットプリンターの需要がピークを迎える十二月、毎年、キヤノンとセイコーエプソンが市場を二分する激しい戦いを展開する。ところが、昨年末、家電量販店の店頭では異変が起きた。エプソンが圧勝したのだ。「十二月だけでみれば、エプソンがキヤノンの二倍のシェアを獲得した」と家電量販店の関係者は指摘する。
キヤノンがぼろ負けを喫したのは、家庭用プリンターの主力生産拠点であるタイの工場が大洪水に見舞われ、操業を停止、年末商戦で欠品を起こしてしまったからだ。一方、エプソンはプリンターの生産拠点が中国、フィリピン、インドネシアだったために、タイの洪水の影響を受けなかった。
これだけをとれば、工場立地の違いが明暗を分けたにすぎない。だが、「日本国内でのモノづくり重視」を主張し、「Made in Japan」を前面に打ち出していたキヤノンが実際は海外生産に深く依存し、足をすくわれた点に今、キヤノンが直面する構造的矛盾が表出している。
グループ決算は四年連続で低迷
キヤノン・・・