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連載

追想 バテレンの世紀 連載71

揺らぐポルトガルの独占貿易
渡辺 京二

2012年2月号

 一七世紀初頭はスペイン系修道会が、イエズス会の独占を打ち破って、日本宣教に加わっただけではなく、貿易の面でもオランダ、ついでイギリスが日本市場に参入し、マードレ・デ・デウス号の爆沈によってマカオ・長崎間の交易が杜絶する一方、フィリピン前総督の日本漂着によって、日本・メキシコ間の交易が模索されるなど、日本とヨーロッパの接触が一挙に多面化した時期である。また日本人もこの頃から、朱印船の形で南方に進出し始め、各地に日本人町が形成された。


 朱印船と南洋日本人町については、のちに一括して述べることにして、ポルトガルによる日本貿易独占が揺らぎゆく経過を、なるべく時系列にそって語りたい。

 スペインに対して反乱を起した北ネーデルランド七州は、一六〇九年スペインと一二年間の休戦条約を結んだ。この条約締結によってオランダは国際的に独立国の地位を得た。アジア海域では条約が翌年発効することにされたので、東インド会社は東南アジア海域で活・・・