EUを見下し始めたトルコ
国民の六割が「加盟反対」に
2012年2月号
トルコの欧州離れが止まらない。イスラム国家のトルコにとって欧州連合(EU)への加盟は悲願の「西欧化」の証しであり、遅々として進まない加盟交渉に長年いらだちを募らせてきたが、形勢は「逆転」した。金融危機にあえぐ欧州を尻目に、トルコ経済の成長率は約一〇%(二〇一一年)と依然堅調だ。石油や天然ガスを国内に集積して、欧州向けの資源供給を「独占」するロシアに取って代わろうともしている。地域大国として自信を深めるトルコは今や欧州の脅威に変貌しつつあり、今後、両者の摩擦が激化するのは必至だ。
トルコと欧州の軋轢を端的に示す「事件」がフランスで勃発した。仏上・下両院議会が一月二十三日までに、旧オスマン・トルコ帝国下のアルメニア人虐殺の否定を「犯罪」とする法案を可決。これにトルコが「歴史の歪曲は許さない」(エルドアン首相)と猛烈に?みついて、外交問題に発展した。
第一次大戦中に起きたアルメニア人迫害を巡っては、アルメニア側がオスマン帝国による民族解放運動の弾圧で最大百五十万人が虐殺されたと訴えているのに対し、トルコ側は帝政末期の内乱時の出来事で、トルコ人も多数が死亡したとして虐殺を史実・・・