《世界のキーパーソン》サイラス・ミストリー( タタ・サンズ副会長)
インド最大タタ財閥「謎」の後継者
2012年2月号
「サイラス・ミストリー氏がタタ・サンズ副会長に指名された。先を見通した良い選択だ。私の引退に伴い、彼がグループの全責任を引き継ぐことができるように、来年は一緒に経営を行っていく」
二〇一一年十一月二十三日、インド最大の財閥タタ・グループを率いるラタン・タタ会長はこう述べ、後継者の決定を喜んだ。確かに難航が伝えられていたタタ財閥会長の次期後継者人事ではあったが、選ばれたのは四十三歳の若き「無名の人物」であった。下馬評では現会長の異母兄弟で財閥傘下企業数社の幹部を務めるノエル・タタ氏との見方が有力であった一方、ミストリー氏を予想していたものは皆無だった。この「想定外」の事態にインド中が騒然となり、現地紙には「サイラス・ミストリー、何者だ」との見出しが躍った。当初、タタ会長が望んでいた「多国籍企業の経営者」でもなければ、タタ家の人物でもなかったからだ。持ち株会社タタ・サンズ取締役の一人ではあったが、ミストリー氏が表舞台に登場することはなかった。タタ・・・