「格差問題」解消に処方箋はない
マイケル・スペンス(スタンフォード大学名誉教授)
2012年2月号
―世界中がマネー資本主義の暴走に翻弄されています。
スペンス 米国、日本、欧州と事情はそれぞれ違うが、現状の経済システムが制御不能な状況に陥っているという重大な事実に気付くことができなかったのは共通している。日米は野放図にレバレッジをかけた資産バブルを見過ごし、これが公共部門にまで波及したことで公的負債を劇的に増加させてしまった。欧州は一部の国が牽引する経済成長を優先するあまり構造改革を先送りした。どの状況も決して不可避の問題ではなく、本来やるべきことをやらなかった結果であり、その意味で政府の失敗といえる。―深刻な格差問題にも世界経済の歪みが表れているのでは。
スペンス 格差の拡大自体はある程度予想できたことで、これはグローバリゼーションの一時的な過程だ。もっとも、平等性を確保し、社会の一体化を保持する取り組みで各国政府が効果的な働きをしたかといえば、それは明らかにノーだ。一時的とはいえ、格差・・・