アラスカ三山「冬物語」
冷酷で容赦なき自然の魅力
2012年1月号
二対八。水彩絵の具と、水を、それぐらいの割合で混ぜたようなサーモンピンク――。
米国アラスカ州のデナリ国立公園周辺の冬の山々は、午前十時ごろ、シロップをかけたかき氷さながら、まずは先っぽから色が変わり始める。それから、少しずつ、ゆっくりと、液体が降りてくるかのように、山全体が淡いサーモンピンクに染まっていくのだ。
高緯度に位置するアラスカの太陽は、冬季、地平線を転がるように移動し、三時過ぎには姿を消す。サーモンピンクの朝焼けは、そんな特殊な「ライトアップ法」と、寒冷地独特の光の屈折率が織りなす冬限定の光のショーなのだ。
ただし、曇りがちな冬のアラスカでは、実際のところ、そう頻繁に見られるシーンでもない。