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連載

不運の名選手たち25

砂岡良治(重量挙げ選手) バーベルと「優勝候補」の重圧
中村計

2012年1月号

 

  上げれば金。落とせば銅。

 しかも、バーベルの重さは二百七・五キロと、その日の最重量に設定されていた。

 砂岡良治にとって、それは自己ベストを二・五キロ上回る、いわば未知の領域でもあった。

 一九八四年、ロサンゼルス五輪。重量挙げ八十二・五キロ級は、そのドラマチックな展開に、観衆も軽い躁状態になっていた。

「床を踏み鳴らす音と、歓声がすごかった。これがアメリカなんだなって思いましたね」

 勇気ある挑戦。真っ向勝負を好むアメリカ人の目には、あるいは、そう映っていたかもしれない。だが、実情は少し違った。砂岡は、厳密には、自分の限界に立ち向かったわけではない。いくつかのミスによって狂った帳尻を、そこで一度に合わせなければならなくなっていたのだ。

 砂岡は、日本のウエートリフティングの歴史を変えた男である。

 地元の小山高校(栃木)で重量挙げと出会った砂岡は、高校二年次に高校記録を樹立。そして日本体育大学・・・