日本の科学アラカルト17
バイオ分野の進歩を支えるタンパク質測定技術
2012年1月号
「バイオ」と称される生物科学系の研究は、極めて微小な世界における物質の振る舞いを知るための営みである。「知る」ためには、解析し測定することができなければならない。つまり、バイオの分野における学術的進歩は、観測・測定の技術革新とともにあるといっても過言ではない。
一九九〇年に始まったヒトゲノムの解析がその後半過程で飛躍的に進捗したのは、その間のゲノム解析技術改善に依るところが大きい。現在でもゲノム解析の技術は開発が進んでおり、たとえば「オーダーメード医療」のために必要な個人のゲノム解析費用はわずか一千ドル程度にまで低下している。
二〇〇二年にノーベル化学賞を受賞した、島津製作所の田中耕一氏の受賞理由が「タンパク質の解析」に関わるものであったことは記憶に新しい。染色体だけでなく、人体をはじめとする生物の体を構成するタンパク質の構造を知ることは容易でなかった。田中氏が開発した「ソフトレーザー脱着法」はタンパク質の質量分析を簡便にし、この功績がみとめられた。
タンパク質の構造を・・・