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政治

《罪深きはこの官僚》新原浩朗 (経済産業省資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部長)

「再生エネ法」潰しの首謀者

2012年1月号公開

 菅直人首相が辞職と引き換えに成立させた肝入り法案「再生可能エネルギー促進法」。この促進法により、二〇一二年七月以降、電力会社が太陽光や風力などの再生可能エネルギーを一定期間、固定価格で買い取ることが義務づけられる。将来のエネルギー政策における原発の位置づけや、再生可能エネルギーへの依存の是非についてはいまだ議論は残る。しかし、そうした正攻法の議論をよそに、この法案成立で省益が脅かされる経済産業省では早くも、この法律を「骨抜き」にしようと水面下で画策する動きが明らかになっている。その首謀者こそ、経産省資源エネルギー庁の新原浩朗・省エネルギー・新エネルギー部長だ。


 十一月十七日、枝野幸男経産大臣は制度の下での買い取り価格と期間を決める「調達価格等算定委員会」の人事案を国会に提案したが、委員の顔ぶれをみると、利害関係者ともいえる進藤孝生・新日本製鐵副社長に加え、脱原発依存に消極的な“御用学者”二人が入っており、五人のうち三人が買い取り制度に否定的な面々だ。

 法案が成立しても、関連する政省令や人事案など細部を詰める段階で骨抜きにするのは官僚の常套手段だが、この人事案の作成に奔走したのが新原らエネ庁幹部だった。新原らは、事前に民自公三党の一部の国会議員に根回しを図り、この自らに都合の良い人事案に「お墨付き」を貰ったうえで、「三党合意」という形で国会にかけるという策を弄した。「三党合意」という形式を取り繕えば、大半の議員はこの人事案に反対することは難しくなる。まさに、委員会の人事案が国会同意人事であることを逆手に取り、国会での否決を予め封じる裏工作をしたのだ。

 一部の国会議員から、「この人事案が通れば、買い取り価格が安く抑えられ、再生可能エネルギー拡大が阻まれる可能性が高い」と危惧する声が噴出し、十二月に入ると、国会でもこの人事案の決定過程を追及する動きが出た。自らこの追及を食い止める“防波堤役”を買って出た新原は、「三党の政調会長合意に基づく法案修正で(調達価格等算定)委員会の設置が決まった。三党に推薦をお願いして、これを参考にして政府が選定」と建前通りの答弁に終始。「いつ誰から推薦を得たのか」との追及にも、「三党政調会長間で議論をして、その三党から推薦をいただいた」と、「根回し」の実態については口を閉ざしており、いまだに人事案は宙に浮いたままだ。

 枝野経産大臣をも手玉に取り、易々と人事案を吞ませた新原は、一九八四年に東京大学経済学部を卒業し、通商産業省(現経産省)に入省。九二年には米国ミシガン大学大学院の経済学博士課程に留学。その後、商務情報政策局情報経済課長や経済産業政策局産業組織課長を歴任するなど産業政策を主に担当し、企業研究に関する著作も多い。菅政権時代には半年間ほど首相秘書官を務めてもいる。

 いま新原が目論むのは、官僚主導の密室談義による意思決定システムの構築にほかならない。こうなれば、国会審議は単なるセレモニーと化し、気脈の通じた官僚出身議員らと秘密裏に重要事項を決定できる。

 霞が関の一部官僚は、永田町の衆参議員会館を「坂の上の動物園」と揶揄しているが、新原はさしずめ、見下した政治家を操る「調教師」にでもなったつもりでいるのだろうか。(敬称略)


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