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躍進トルコの二人の「立役者」

「盟友であり敵でもある」首相と大統領

2012年1月号

 トルコにとって、この十年はまさに飛躍の時期だった。経済危機を脱し、一人当たりの国民総所得(GNI)は三倍増に。国際舞台では「ネオ・オスマン主義」と評される全方位外交で周辺国への影響力を強め、地域大国として足場を固めた。成長の立役者はイスラム系の与党・公正発展党(AKP)を率いるエルドアン首相(五十七歳)であり、同志のギュル大統領(六十一歳)だ。人気・実力とも伯仲する二人の存在は、プーチン首相とメドベージェフ大統領を擁するロシア以上の「双頭体制」といっても過言ではない。実はトルコにとって二〇一二年は、その盟友関係がほころぶ波乱含みの年になるかもしれないのだ。

大統領ポストを巡る確執

 AKP政権で特筆すべきは何といっても経済面での成功である。トルコは長らく保護主義的で、対外債務が膨らみ、たびたび経済危機に見舞われてきた。一九八三年の民政移管後には開放政策への転換も図られたが、九〇年代になると不透明な財政に国際的な信用が低下。二〇〇〇年には銀行の不正融資疑惑から金融危機に発展し、通貨トルコ・リラの変動相場制移行を強いられた。  AKPはこの「どん底」で政権・・・