独仏が目論む「欧州合衆国」構想
弱小国の「保護国化」は不可避
2012年1月号
出口の見えない欧州債務危機への欧州連合(EU)の対応策に、世界中が注目を続けている。
十二月八日・九日の欧州理事会(EU首脳会談)では、イギリスを除く二十六カ国による「財政協定」の締結を柱とする抜本的改革が打ち出された。しかし、週明け十二日の市場は失望売りの展開。EU首脳は市場の不安を打ち消せずまたもや失敗と評された。
ところが、今回の改革の本質を見極めると、これまでの対症療法と異なり一種の根治療法といえ、即効性はなくとも今後数十年におけるEUのあり方を決定する構造転換点となる可能性を秘めている。第一に、今般の債務危機の傷口を広げた市場の影響力が大きく排除され、欧州経済通貨同盟はもはや市場の顔色を窺う必要がなくなる。そして第二に、ほとんどのメディアが看過しているが、今回の財政協定には経済弱小国の実質的な「保護国化」を促す一つの制度が組み込まれる見通しで、これは、今後独仏主導により「欧州合衆国」が実現される布石となりうるものである。以下、順に敷衍しよう。