「金正日死去」と米中露
世界を覆う「反独裁体制」の波
2012年1月号
大きな地球儀を回して観察すると、北朝鮮の今後をめぐって米国と中国は激しい鬩ぎ合いを演じている。悪質な点では二十世紀の独裁者スターリン、ヒトラー、毛沢東に匹敵する北朝鮮の金正日総書記の死去は世界に衝撃を与えたが、後継者である「わが党と軍隊と人民の卓越した領導者(指導者)である」金正恩朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長の政治的能力がどの程度かは誰にでもわかる。北朝鮮が従来の金王朝体制を続けられるはずはないだろう。
北朝鮮の動向に重大な関心を持つ米中両国は平静だ。両国とも朝鮮半島の平和と安定を維持する気持ちには偽りはない。が、米国が望んでいるのは、この国が経済を開き、政治的民主化の方向へと歩み始めることだろう。できれば韓国主導の「自由統一」を望んでいるかもしれない。しかし、一党独裁の体制を崩していない中国が、自ら試みて成功した改革・開放政策を歓迎するとしても北朝鮮の事実上の中国離れを認めるかどうか。ただし、その中国も世界的な潮流となってきた独裁国家あるいは独裁者反対の波にいつまで抵抗できるかは疑問だ。易々と大統領に再選されると思い込んでいたロシアのプーチン首相も独裁反対の声にたじろい・・・