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連載

続・不養生のすすめ12

「低栄養化」している日本人
柴田 博

2011年12月号

 


六年前のことであった。ある講演会で筆者は「日本人の食生活や栄養に関して“欧米化”とか“飽食”とかのレッテルを貼っている人が多いが実は低栄養が進んでいる。摂取エネルギーが二〇〇〇キロカロリーのレベルを割り込んでまだ減り続けている。このままでは、終戦直後の一九〇三キロカロリーを切るかもしれない」と話した。

 多くの聴衆は、欧米化しているから増えていると思っていたエネルギーが減っていると知って、まさに“目からウロコ”といった表情であった。そこで一人の栄養学の専門家と思しき男性が質問をしてきた。それは「日本社会は高齢化して高齢者が増加している。しかも同じ高齢者集団でも平均年齢が上昇しているのだから、摂取エネルギーが減少するのは当然ではないか」というものであった。

 不覚にも筆者は、「そういうことがあるかもしれませんね」と答えた。高齢者の低栄養を専門としている筆者は加齢にともなう摂取障害や生活機能の低下によりマーケットにアクセスできなく・・・