「内乱」に向かうイスラム過激派
政治混迷に乗じ版図拡大を狙う
2011年12月号
「アラブの春」の嵐の中、イスラム過激派の存在感は相対的に薄れた。米国が中東地域からの撤退を公言し、欧米全体が「内向き」を志向する中で、攻撃対象を見失い、その動きは埋没したかに見える。
しかし実は、政治的混乱の中でイスラム過激派は目標を見定め、その存在感を不気味に増しているのだ。
「フィトナ」。外部の敵との戦いである「ジハード」に対して、イスラム世界での「内戦」を示す言葉だ。イスラム専門家の一人が語る。
「『アラブの春』以降、イスラム過激派の視線は欧米よりも身近な対象に向かっており、フィトナを強化し始めた」
歴史を辿れば、そもそもイスラム過激派の多くは、一九九〇年代に入るまでは国内で反政府活動を行ってきた。同じイスラム教徒を巻き添えにする手法は、民衆からの反発を招く。加えて権力者による弾圧もあり、彼らは「敗北」した。その後、敵を外部に求めるジハードに路線を変更し、それが二〇〇一年の9・11テロを一つの頂点として結実することとなる。
今回のフィトナ志向は、ある意味で原点回帰といえよう。過激派は政治的混乱に乗じて、新たな根拠地を確保している。また、域内の「権力者」・・・