原発事故「津波原因説」に疑問あり
「地震説」を裏付ける論拠の数々
2011年12月号
「黒塗りの手順書が公開されたことで、東京電力が嘘をついていたことが決定的となった。『運転員が手順書に従って、急激な温度変化(五五℃/hr以上)を避けるために非常用復水器を止めた』と東電は説明してきたが、その操作を行うのはトラブル発生直後ではなく、トラブル収束直前であることが手順書に書いてあったからだ」
東電の隠蔽改竄体質をこう喝破するのは、サイエンスライターで元原発技術者の田中三彦氏だ。原子炉メーカー、バブコック日立の元技術者として福島第一原子力発電所4号機の圧力容器設計にも関わった田中氏は、退職後、原発の安全性を外部からチェックする側に回り、今回の事故原因についても分析。数々のデータ分析などを駆使し、津波襲来前に配管などが深刻な損傷を受けたとする「地震原因説」を主張、津波で全電源が喪失して水素爆発につながったという「津波原因説」の立場を取り続ける東電に異論を唱えてきた。
福島第一原発の事故をめぐっては、これまで東電からの大本営発表をもとに、津波説が半ば確定的に語られてきた。しかし、事故から八カ月以上が経過した現在でも次々と新事実が公表される始末で、真の事故原因究明は遅・・・