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社会・文化

世界の頂点に迫る「米加州ワイン」

仏トップシャトーを脅かす存在に

2011年12月号

 歴史上の権力者たちが名声を広めたワインがある。ナポレオンの愛したシャンベルタン。イタリア王国の初代国王がお墨付きを与えたバローロ。トーマス・ジェファーソン元米大統領が好んだシャトー・ディケム。「王のワイン」と呼ばれた銘酒ばかりだが、その評価が確立したのは十九世紀のヨーロッパである。栄光はうつろいやすい。アメリカの世紀と呼ばれた二十世紀。あらゆるジャンルで頂点を狙う超大国から、世界一を目指すワインが生まれた。パワー・エリートたちが探し求める現代の「王のワイン」。その名をハーラン・エステートという。

ボルドー愛好家ほど魂に響く

 王のワインには、共通する三つの条件がある。高い品質、少量生産と高い価格、伝統と歴史。  最初の品質。これを測るのが実は難しい。超高級ワインとは、美術品や三つ星レストランの料理のようなもの。美しさやおいしさは客観的に表現しにくい。理解するには素養や経験も求められる。だが、ワイン界には便利な物差しがある。米国のワイン評論家ロバート・パーカーが百点満点方式で評価するパーカー・ポイントである。世界で最大の影響力を有する「ワインの帝王」は、・・・