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米国の「アジア回帰」は本気

「中国包囲網形成」へGO

2011年12月号特別リポート

 バラク・オバマ米大統領が事前に予想していなかったとは考えられない。米財政赤字削減のための超党派協議が十一月二十二日に決裂し、米国防総省はすでに決まっていた十年間で四千五百億ドルの歳出削減にさらに六千億ドルが上積みされる容易ならざる事態に直面した。しかし、その直前にオバマ大統領はハワイ、豪州のキャンベラ、ダーウィン、インドネシアのバリ島に飛び、「新オバマ・ドクトリン」とも称すべき米国を中心に民主主義国を連ねた対中国戦略を鮮やかに描いてみせた。

 年内にイラク、二〇一四年までにアフガニスタンから撤退する米国に対して懸念されている衰退化や孤立主義化論を頭から否定し、中国に対する柔軟なエンゲイジメント(関与)政策と強硬なヘッジング(保険)政策のうち、米国は後者に重点を置くとの宣言だ。米国を含めたアジア・太平洋の国々は中国と経済的に相互依存関係を深めながら、東シナ海、南シナ海、インド洋などで中国が軍事力を背景に示す覇権主義に悩まされてきた。これに明快な回答を与えたと言っていい。さらにミャンマーを中国から引き離そうとの驚くべき企てに着手した。

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