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社会・文化

水産特区構想」に付け入る外資

「垂涎の漁場」が荒らされる

2011年11月号

 東日本大震災による爪痕がまだ色濃く残っていた六月、宮城県の金華山沖を航行している一隻の海洋調査船が確認された。調査船は中国水産科学研究院所属の「南峰」(総トン数一千五百三十七トン)。  三百三十キロ沖ということは、当然ながらそこは日本の排他的経済水域(EEZ)内である。中国側による調査船派遣の目的は、同海域で水揚げされるサバとイワシの漁況と福島第一原発事故による放射能汚染の影響を確認するためだったとされる。自らの庭先に突如姿を現した中国調査船の不気味な姿に、地元漁業関係者は言い知れぬ不安を抱いたという。  中国調査船が跋扈する三陸沖は世界の三大漁場の一つに数えられ、周辺国にとっても漁業資源の宝庫として垂涎の的だ。その三陸沖を擁する宮城県ではいま、村井嘉浩知事が提唱する「水産特区構想」の議論が進んでいるのは周知の通りだが、その動きを奇貨として、虎視眈々と参入の足場作りに動く外資の影がどうやらちらつき始めたようだ。

被災地の沿岸域を外資が落札

「競売の土地をある女性が落としたそうです。聞いたこともない名前の……」  女性名義の件の土地は東日本大・・・