三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

社会・文化

「医学部新設」を阻む日本医師会

医師不足「現状維持」の元凶

2011年11月号

 我が国の医師不足が深刻の度を増している。文部科学省は、二〇一九年度まで医学部定員を増やしつづけることを発表したが、この程度では焼け石に水。危機的なレベルにある地域からは、医学部新設を求める声があがっている。これに真っ向反対するのが、かつて、最強の業界団体と言われた日本医師会(日医)だ。医療崩壊の只中にあって、なおも国益無視で既得権益にしがみつく様は、醜悪の一語に尽きる。

千葉、埼玉、茨城はメキシコ以下

 日医が相変わらずの身勝手ぶりを披露したのは、文科省で始まった「今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会」でのことだ。検討会は、定員増反対と賛成に分かれ、激論が繰り広げられた。前者の代表は中川俊男・日医副会長。後者は今井浩三・東京大学医科学研究所病院長だ。  二人とも札幌医科大学卒の同門だが、その意見は真っ向から食い違う。今井は「医師不足対策はやり尽くした。冬は雪に閉ざされる広大な北海道では医師の絶対数が足りない」と言う。一方の中川は「このままの勢いで医師を増やすと、近い将来、医師は過剰になる。歯科医のように(所得が少なく)なってもいいのか」と主張す・・・