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WORLD

極めて剣呑「中国の不動産バブル」

アジア経済を直撃

2011年11月号

 北京市西部に位置する釣魚台迎賓館。広大な敷地内には距離を置いて、いくつもの建物が立ち並ぶ。かつて国交正常化のために赴いたニクソン元米大統領や田中角栄元首相らも滞在した中国の顔とも言うべき場所だ。その近傍に「釣魚台七号院」と名付けられたマンション群が完成し、販売され始めたのは二〇〇九年。迎賓館とはまったく関係のない民間デベロッパーが開発した物件だが、その価格が常軌を逸したものだったため、中国全土にその名が知られるようになった。 「釣魚台七号院」のうち最も高価格の三号楼は今年五月に完成。当初の売り出し価格は一平方メートルあたり平均三十万元と中国最高価格となった。三号楼の一戸あたり面積は三百五十~七百平方メートルであり、最高額の部屋の値段は二億一千万元(約二十六億二千五百万円)だった。一九八〇年代末のバブル期の日本をもはるかに凌駕する中国の住宅バブルであり、この数年はこうした異常な高価格もまかり通っていた。むしろ高額物件であればあるほど高く転売できるとの発想だった。だが、三号楼はそうした中国のバブル発想を裏切るようにまったく売れなかった。三カ月で当初の半値以下に値下げしても一戸も売れ・・・