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社会・文化

伊勢神宮「驚異の米」の実力

いまだ普及せぬイセヒカリ

2011年10月号

 伊勢神宮「神田」。九月二日に予定されていた収穫の祭祀「抜穂祭」は、ノロノロと迷走した台風十二号の影響で延期された。中部地方に甚大な被害を及ぼした台風だが、神田の稲は、風雨の爪痕を感じさせない立ち姿を保ったままだった。異例の日延べ後、抜穂は滞りなく執り行われた。    古の頃、天皇の祖先である瓊瓊杵尊が天から降りてくる際に天照大御神から授かったのが、三種の神器と稲穂だった。その伝説が現代で蘇ったかのごとく、その稲は平成の御代替わりの時と合わせて、天照大御神を祀る伊勢神宮の神田で「突然変異」の米として発見されたのだ。それは、台風にも負けない強靱さと、コシヒカリに勝る抜群の味をもつ、まさしく驚異の稲だった。    その米の名は「イセヒカリ」。    平成元年、伊勢地方は二度の台風に見舞われた。神田のコシヒカリは、無残にも倒伏してしまっていた。その田んぼの真ん中で、何事もなかったかのごとく直立する稲株があった。成熟とともに見事な金色に色づいたその稲は、八年ののち、「聖寿無窮を祈念し、皇大神宮御鎮座二千年を記念」して「イセヒカリ」と命名された。秋の神嘗祭には、コシヒカリに取っ・・・