不運の名選手たち22
大城さつき (女子プロゴルファー)「おじー」に見せたかった初優勝
中村計
2011年10月号
考えないゴルフ―。それが自分に課したルールだった。
そんな信条とでも言うべきものに小さなヒビが入った瞬間、プロデビュー二年目の大城さつきの腕の中から、初優勝という大魚がスルリと逃げた。
軽井沢で開催された六月のリゾートトラストレディス。単独首位で迎えた最終日でのことだ。心にブレを生じさせたのは、17番の何でもないパーパットだった。
「『ここで(ミスが出る)?』って感じでしたね」
その時点で二位の横峯さくらとは二打差あった。が、「何にも考えないで打った」はずの一メートル弱のパットが、カップの右側の縁をかすめ、奥へと抜けた。
「短いパットは、何にもないときは何でもないんですけどね……」
だが、何かあると途端に御し難い何かに変貌するのだ。
パット・イズ・マネー。プロゴルフ界にある「格言」だ。大城も、その洗礼を浴びたわけだ。
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