本に遇う 連載 142
天声小人語の姑息さ
河谷史夫
2011年10月号
焦点の定まらない虚ろな目をして消えていった菅直人の後を野田佳彦が襲ったが、民主党代表選を制したのはその演説の巧みさであったというのは本当だろうか。
「どじょう演説、よかったね。最高だった」と、かつてその祖父近衛文麿と同様に政権を中途半端に放り出した細川護熙が言ったというから何かと思えば、今や野田の後ろ盾のつもりらしい。もう一人、首相を辞めた後いったん引退を口にしながら翻し、キング・メーカー気取りだった鳩山由紀夫とともに、ゾンビ舞い踊る日本政界暗夜である。
野田はどじょうだの金魚だの言ってみたり、雪だるまを担いで雪の坂道を上がるのは大変だと言ってみたりしていたが、あんな例え話だけの弁舌がまともな政治家の演説と言えるか。
それも雪だるまは北海道の同僚議員の話を借用、どじょうは相田みつをの「どじょうがさ金魚のまねすることねんだよなあ」を引用。要するに他人の褌で相撲をとっているだけで、夫子自身・・・