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経済

トヨタの危険な 新興国拡大戦略

勝算なき中国車との死闘に突入

2011年10月号

 かつて「ドル箱」だった北米市場での長期低迷に加え、世界最大の中国市場でも鳴かず飛ばずのトヨタ自動車が、東南アジア諸国連合(ASEAN)市場での増産を本格化させている。九月十三日、トヨタは中国、インドに続く次なる新興市場と目されるインドネシアへの大型設備投資を発表した。成長が期待できる新興国市場に進出するのは当然としても、一方で依然深刻な過剰生産能力の問題に何ら手が打たれていない。トヨタは社内外で強い影響力を持つ生産部門の意向で生産リストラを進めることができないまま、苦肉の策として再び危険な「戦線拡大」にハンドルを切った。

生産縮小を打ち出せない

 「インドネシアの自動車市場は多くの自動車メーカーが注目している。将来の期待はますます高まっている」。トヨタの豊田章男社長は九月十三日にジャカルタで開かれた新工場設立会見で、あまりに楽観的な見通しを披露した。約二百六十三億円を投資する新工場は二〇一三年に稼働し、インドネシアでの年間新車生産台数は現在の十一万台から十八万台に拡大する。トヨタは生産車種について明らかにしていないが、会見で章男社長は「小型車は選択肢の一つ・・・

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