《企業研究》 日本航空
危険な「稲盛教」経営
2011年10月号
グループ三社で二兆三千二百二十一億円という、事業会社としては戦後最大の負債を抱え、日本航空(JAL、稲盛和夫会長)が東京地裁に会社更生法の適用を申請したのが、昨年一月十九日。それから一年九カ月。二〇一二年度中の株式再上場に向けて経営再建中のJALでは今、「順調な・字回復」という公式発表の裏で、にわかには信じ難い事態が進行している。意識改革という名の「宗教まがい」の社員教育が公然と行われているのだ。教典の名は「JALフィロソフィ」。京セラの成功体験をJALに持ち込んだもので、その教祖はもちろん、「経営の神様」稲盛会長だ。
JAL経営陣は、フィロソフィを核とする「意識改革の成果」で経営の改善が進んだと誇示するが、不満を燻らせる社内からは、安全運航を犠牲にしかねない危険な利益至上主義の徹底や経営実態の隠蔽など、本業の基盤が綻びつつある実態が伝わる。そこには、かつてナショナルフラッグシップを担った名門企業の片鱗などどこにもない。JAL内部に一体何が起きているのか。
安全よりコストカット優先
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