猛威ふるう 新興国「国営メジャー」
歪められる資源市場
2011年10月号
中東・アフリカ情勢の混迷などを背景に、北海ブレント原油価格は依然として一バレル当たり百ドル超の高値で推移している。だが本来、価格上昇が進めば需要は減退し、適正な価格に落ち着くはずが、新興国の石油需要は伸び続け、エネルギー専門家を驚かせている。
その背景には、中国をはじめとした新興国が競って推進するガソリンや灯油への補助金政策がある。彼らは社会構造を安定化させ、国民の不満を醸成させないために、国際原油価格の上昇を国内石油製品価格に直接反映させない歪な市場を築いているのだ。これが適切な資源配分と正常な市場メカニズムを阻害する異常な状況をもたらし、結果として石油のほぼ全量を海外からの輸入に依存する日本経済に大きな負担を与える構図となっている。
同時にこうした状況は、新興国の国策石油企業(新興国メジャー)を猛烈な資源開発へと駆り立てている。国内の石油価格の低迷から、すべての新興国メジャーは末端の精製・販売部門の不採算化が極度に進んでいる。このため下流部門から利益率の高い上流部門、すなわち資源開発への傾斜を一段と進めているのだが、これが新興国のさらなる爆食を助長しているのだ・・・