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「火薬庫」と化すタイ深南部

大規模・巧妙化するテロ

2011年10月号

タイ南部のマレーシアと国境を接する地域にあるナラティワート、パッタニー、ヤラーの三県を総称して「深南部」と呼ぶ。この地でのイスラム過激派によるテロは止まず、犠牲者を出し続けている。最近では、これまで以上に国外組織からの支援が強まっていることが明らかになり、東南アジアのイスラム過激派組織、「ジェマ・イスラミア(JI)」の先鋭グループの拠点にさえなっている可能性が急浮上している。

「JI」分派が浸透か

 八月二十八日、パッタニー県パナレ郡でゴム園所有者が園内に埋設された地雷で爆死した。九月十五日には、同県カポ郡で通行中のピックアップが爆弾テロに遭遇し、タイ国軍兵士五人が死亡。さらに十六日にはナラティワート県スンガイコロク郡で約一時間の間に三カ所で連続して爆破テロが発生し、外国人観光客を含む三人が犠牲となっている。    タイ深南部でのテロは二〇〇四年からこれまでに九千件以上が発生し、四千人以上が犠牲となった。爆発が小規模であることが多いため、一回ごとの犠牲者は少ないが、驚くべき数字であることに変わりはない。    これほどの「被害」を出す集団にもかかわ・・・