お粗末 「医療ツーリズム」
「日本の技術が最先端」など幻想
2011年9月号
福島第一原子力発電所事故の影響で訪日外国人数の大きな落ち込みが目立つ中、外国人観光客増加のテコ入れ策として政府が力を入れているのが、近年注目され始めた「医療観光(メディカル・ツーリズム)」である。単なる観光客ではなく、国内医療機関を利用する患者として外国人を誘致する医療観光は、今や海外では外貨獲得の有力な産業に成長している。アジアでトップのタイでは年間百四十万人の外国人の患者が訪問。シンガポールの「国立シンガポール大学病院」では患者の約半数、オーストラリアのシドニーでも約二割を外国人が占めるという。しかも医療観光の年平均成長率は九%で、二〇一二年には一千億ドル市場に成長すると見られている。
この巨大市場に遅ればせながら参入しようとしている日本は、政府が新成長戦略の中に「国際医療交流」として位置づけ、目標として「二〇二〇年にアジアトップ水準の評価・地位獲得」も掲げ、すでに外国人患者受け入れ推進体制の検討整備や拠点整備などの取り組みも始まっている。
しかし医療関係者からは「医療観光など絵に描いた餅。海外がやっているから日本も真似しようという程度の内容。現場の実態を知らない・・・