終わらない世界経済の「大変」
十月にも次のパニック発生か
2011年9月号
「矛盾している? それはそうかもしれないがね」と旧知のヘッジファンド運用担当者は苦笑した。
S&P社の米国債格付け引き下げショックに端を発した世界同時株安。これで、六月末に五十六兆五千九百ドル(約四千五百三十兆円)あった世界の株式市場の時価総額は、八月第一週だけで六百四十兆円も減少してしまった。
冒頭の言葉は、「本来なら米国債の格付け引き下げなのだから、暴落は債券市場で起きてしかるべきだが、米国債利回りは低下(債券価格上昇)したのは矛盾していないか」と筆者が質問したことへの答えである。
この人物は続けて「米国債市場が崩れることよりも、株式が下がることの方が米国にとり被害が少ないので、俺たちは努力したよ。これからいい政策が出てくれるかもしれないしね」と笑みを浮かべた。分かりやすく言うと、米国系ヘッジファンドは米国債格下げの悪影響を株価急落によって目くらましをしたのだ。「要するにタイミングの問題でまず主要株式市場に大量の売りを出しただけだ」と。
実はS&Pによる米国債格下げ発表以前の七月下旬、米国政府公認の十の格付け機関の一つが米国債をすでに格下げしていた。・・・