ロシアが「北極軍」を強化
海氷域面積縮小で
2011年9月号
この夏、北極海の海氷域面積は、観測史上最速のペースで縮小した。夏季の海氷域面積は、二〇〇七年九月に四百三十一平方キロメートルの史上最小を記録したが、今年は既に四年前を上回る速度で溶けており、九月に最小記録を更新することが予想される。原因は気候変動とも、海流ともいわれているが、結果として本来「冷たい」はずの北極海が、熱を帯びている。
航路としての重要性
「数年前であれば『北極の資源を巡る争い』という話が出たであろうが、実はこれは既に過去の話だ」
ある海洋安全保障の専門家はこう語る。米国地質調査所によれば、北極海には九百億バレルの原油と、五百億立方メートルの天然ガスが眠る。地球全体の原油の七%、天然ガスの実に二五%が偏在するのだ。国連海洋法条約の下で、沿岸国は領海の基線から二百海里を超える大陸棚が地理的に連続していることを、科学的に証明できれば大陸棚の外縁を三百五十海里まで延伸することができる。既に国連の専門委員会で審査が始まっており、国連海洋法条約に加盟していない米国を除・・・