トルコの「イスラム化」は止まらない
「政教分離の守護者」は虫の息
2011年9月号
トルコのエルドアン政権が強大化している。これまで国の近代化を支えてきた世俗派エリートは「改革」で勢力をそがれ、とりわけ、国是である政教分離の守護者を自任する軍部は・虫の息・だ。国父アタチュルクの血統として過去四度、政権を転覆させた軍部だが、「もはやクーデターはあり得ない」とまでささやかれ始めた。エルドアン政権の野心は国内にとどまらず、旧オスマン帝国支配地域での影響力を再興する「ネオ・オスマン主義」にも意欲を燃やす。米欧は民主国家トルコを中東安定の要と位置づけてきたが、イスラム系のエルドアン政権の強大化は国家の「宗教化」の脅威と表裏でもあり、足場は揺らいでいる。