イラクで吹き荒れる「宗派対立テロ」
暗躍するイラン革命防衛隊
2011年9月号
八月十五日、イラク国内十八の都市や町で連続して発生した今年最大のテロで、七十四人が犠牲となり三百人以上が負傷した。犯行を行ったスンニ派組織「イラク・イスラム国」は、八月一日から始まった「ラマダン(断食)月」の半ばから攻撃を開始し、百回のテロを行うことを事前にウェブ上で宣言していた。
世界の目が「アラブの春」として始まった民主化運動に奪われているうちに、イラク国内の治安情勢は混迷を極めている。八月十八日に米国務省が発表した最新の年次報告書にはこの事実の一端が表れている。イラク国内でのテロは、二〇一〇年に二千六百八十八件発生しており、これは前年と比較して約一割の増加だ。今年に入ってもテロの勢いは衰えていない。この背景について、イスラム専門家の一人はこう語る。
「イラン革命防衛隊によるイラクのシーア派への関与と、これに反発するスンニ派との暴力の連鎖が起きている。また、北部のクルド人居住地域に対しても、革命防衛隊による、圧力が強まっている」