中央アジア「水争い」の壮絶
日本や中国にも影響は必至
2011年9月号
ユーラシア大陸の中心部で「水戦争」が始まった。震源地は中央アジア五カ国で、事態の深刻さから見ても、東隣の中国や南のアフガニスタンやパキスタンへの波及は必至だ。この地域一帯ではこれまで、イスラム過激派ばかりが注目されてきたが、今後は水を巡る紛争が重大な課題に浮上している。
ウズベキスタン最南端で、タジキスタンとアフガニスタンに近い古都テルメズは、名付け親がアレキサンダー大王の軍隊だ。ギリシャ語で「暑い町」。八月の気温が四十五度を超えるこの町の鉄道駅が、水戦争の最前線である。ウズベキスタン当局が八月に入って、タジキスタン行き貨物列車をすべてこの町で止めているためで、燃料輸送を止められたタジク側は、「海賊に等しい蛮行」とウズベク側を非難した。ウズベク側の兵糧攻めは昨年から断続的に続いている。
「発端はタジク側にある。彼らはウズベクへの水供給を減らして、ウズベク国民を干上がらせている。今夏は特に被害が深刻だ」と、ウズベク筋は憤る。
直接の争点は、タジキスタンがヴァクシュ川に計画する「ログンダム」建設問題だ。パミール高原の水が豊かなタジキスタンは、ソ連時代からダム建設が盛・・・