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WORLD

「崩落前夜」のブラジル経済

レアル急落の予兆が随所に

2011年9月号

「全ブラジル国民のために政治を行い、貧困撲滅のために私は戦う。食事にありつけない国民がいる限り、私は決して休まない」  今年一月一日に行われた大統領就任演説で、ジルマ・ルセフ新大統領は拍手喝采する熱気を帯びた七万人の聴衆の前でこう宣言した。「同国初の女性大統領」、そして「左翼ゲリラから大統領へ転身」と彼女を表現する言葉は多い。この「貧者のカリスマ」ルセフ大統領の前に、早くも暗雲が立ち込めている。高金利の資源国通貨を目指して、低金利の先進国から巨額の資金が流入した結果、輸出や生産が停滞。「破壊的上昇」を見せる通貨レアルは、「インフレ圧力」や「新興国に見合わない過剰消費」と絡み合い、その先にある通貨急落へと驀進しているのだ。

信用バブルに「終わりの時」迫る

「これは、世界通貨戦争だ」。同国マンテガ財務相がこう述べて、各国の通貨安政策を批判したのは昨年九月。通貨高へのその強硬姿勢は世界の金融市場で物議を醸した。しかし、ブラジルの通貨レアルは二〇〇八年十月以降、五割も上昇し、現在も防戦一方の展開が続いている。通貨レアルは七月二十六日に「一ドル=一・五三レアル」ま・・・