欧州で高まる「国境復活」の機運
極右台頭で「分裂」の危機
2011年9月号
ヨーロッパを旅行したことがある者なら、「シェンゲン協定」を知らない者はいないだろう。パリからタリス(高速列車)でケルンに向かい、そこからローマ行きの夜行に乗ると、欧州五カ国を移動することになるにもかかわらず、この間一度も国境検査に出くわすことはない。これは、欧州諸国の域内国境検査撤廃を定めるシェンゲン協定の恩恵だ。このシェンゲン協定が、目下、欧州連合(EU)の激しい内輪揉めを惹き起こしており、「欧州統合」の精神に深刻な綻びをもたらそうとしているのだ。