リビアの次はシリア崩壊
イラン孤立で中東情勢は一大転機に
2011年9月号特別リポート
中東の台風の目はリビアからシリアに変わった。米政府は、四十二年にわたってリビアを支配し、国際テロに関わりを持った最高指導者ムアマル・カダフィ大佐には一片の同情もなく、政権の受け皿である「国民評議会」(TNC)が内部分裂し、新たな内戦が発生しないかどうかを懸念しているだけだ。が、シリアのバッシャール・アサド大統領による反体制派への武力弾圧は性格が全く異なる。この政権がどうなるかによって中東の力の均衡は激変するのだ。
アサド大統領らシリアの支配層はイランのシーア派の分派とも言うべきアラウィ派である。古代ペルシャの地方総督よろしくアサド大統領はイランと呼吸を合わせて、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスという二大武装勢力に対する武器、弾薬提供の仲介を果たしてきた。しかも、二〇〇七年九月にシリアは北朝鮮の助けを借りて核施設の建設を試みた途端にイスラエル空軍の急襲に遭って完全に破壊された。
シリア経由でイラクに渡ったテロリストと武器によって、どれだけ多数の米将兵が生命を失い、負傷したか。そのシリアでアサド政権が倒れ、民主化政権が誕生したら、・・・