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《世界のキーパーソン》張徳江(中国副首相)

「高速鉄道事故」で窮地に立つ責任者

2011年8月号

 七月二十三日に浙江省温州市で発生した中国高速鉄道の事故。その現場で鉄道担当として陣頭指揮を執るのが張徳江副首相だ。
 四人いる副首相の一人である張氏は、来秋の共産党大会で党政治局常務委員(現在九人)への昇格を目指す政治局委員である。これまで、大都市での実績を基に順調に出世してきたが、今回の事故で大きな試練に直面した。
 東北部の遼寧省に生まれた張氏は北朝鮮に留学し、金日成総合大学を卒業。北朝鮮国境に近い吉林省延辺朝鮮族自治州で「知識青年」として農作業に明け暮れた。
 転機が訪れたのは、天安門事件のあった一九八九年だ。かつての張氏の上司に、吉林省書記を務め当時人民日報社長だった高狄氏がいる。高氏は、当時上海市書記だった江沢民氏が事件を契機として党総書記に抜擢されたことを支持した。この恩に報いる形で、江氏はその後吉林省出身者を厚遇したといわれる。
 江氏は、九〇年に初めて北朝鮮を訪問した直後、当時北京で民政次官だった張氏を吉林省副書記兼延辺朝鮮族自治州書記に登用し、難しい国境地域で統治経験を積ませた。その後、張氏は同省書記を経て沿岸部の浙江省、広東・・・