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政治

《政界スキャン》

いなくなった「一喝型」の長老

2011年8月号

 


 昔は一喝型の長老が何人かいて、政界ににらみをきかせていた。顔が浮かぶのは、山中貞則、後藤田正晴、梶山静六、野中広務らだ。ことに山中は税制の大御所で、山中の了解をえなければ、税制をいじることができないと言われた。
 中曽根康弘が首相の時、山中に電話し、
「売上税(のちの消費税)を……」
 と言ったとたん、
「だめだっ!」
 と一喝、がちゃんと切った、という話は有名だ。それぞれの長老に逸話が残っている。野中は、
〈政界の狙撃手〉
と称された。野中に狙われるのを政治家は怖れたのである。
 しかし、政治家の小粒化が言われるなか、メリハリのきいた長老も次第に少なくなった。特に民主党政権下、政権が危機的な状況に陥っても、長老は先輩としての役割をほとんど果たしていない。
 七十五歳以上か議員歴三十年以上を長老の目安とすると、民主党には、沓掛哲男元国家公安委員長(八十一歳・議員歴二十一年)、渡部恒三最高顧問(七十九歳・四十二年)、藤井裕久・・・