全欧州で勢い増す「極右思想」
ノルウェー・テロは「発火点」
2011年8月号
「寛容」と「高福祉」で世界に知られた北欧で、地下のマグマが地表に噴出した。ノルウェーで七月二十二日に起きた連続テロ事件は、スカンジナビア全土における反イスラム感情の暴発だ。今年は民主化革命でアラブ系移民の流入が進むだけに、事件の衝撃波を経た後は、イスラム教徒に対する「憎悪の政治」が、全ヨーロッパで勢いを増す危険がある。
北欧全体に広がる「イスラム不信」
アンネシュ・ブレイヴィク容疑者に世界が注目する中、容疑者が以前所属していたノルウェーの極右「進歩党」は、釈明に追われた。シヴ・イェンセン党首は、地元テレビに対し、「私も身の毛がよだつ思いをした。これは全ノルウェーに対する攻撃だ」と語った。四十二歳の党首は、精悍な風貌と精力的弁舌で知られるが、今回は防戦一方だ。
もっとも、過去の彼女の発言には、容疑者に通じるものもある。イスラム過激派との戦いを「現代の最も重要な闘争」とし、自党を「人種差別」と非難する政敵には、「現実に目をつぶって、寛容でリベラルなふりをしているだけ」と反撃した。容疑者・・・