マードック帝国「跡目争い」の熾烈
盗聴事件より深刻な「身内紛争」
2011年8月号
世界最大のメディア企業「ニューズ・コーポレーション」が英国での盗聴疑惑で大揺れの中、メディア帝国を率いるルパート・マードック会長兼CEOの最後の戦いが始まった。報道倫理の欠如が攻撃され、デビッド・キャメロン英首相まで釈明と謝罪に追われているのに、八十歳の会長は一族支配の再構築に知恵を絞り、主役たちの暗闘も激化している。
七月十九日に、英下院で行われた、マードック親子に対する公聴会は、一族勢ぞろいの点で壮観だった。証人席のルパートとジェームズ父子の後方に、ウェンディ夫人が足を組んで控え、その隣には次女エリザベス。夫人が、ルパートを襲った暴漢を、後ろから殴りつけて夫を守る一幕まであった。
父子は、誰が巨大企業の真の支配者なのかも見せつけた。辞任を迫る英国の下院議員に対して、そろって、「大企業経営とはそんなものではない」と一蹴した。ルパートは、「あなたに責任があるのではないか」という追及に、「ない」と、ただ一声。「この混乱を収拾する最善の人物は自分である」と議員席を睥睨すると、異論を唱える者さえいなかった。
家族支配の継続に正念場
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