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中国は南シナ海で「棍棒外交」

米の抑止力は海軍力だけ

2011年8月号特別リポート

 南シナ海の領有権をめぐって中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)ならびに米国が対立し、中国は包囲網の下に孤立化しつつある―との解説は俗耳に入り易い。が、現実はベトナムもフィリピンも中国による経済的恩恵を受けたうえでその強大な軍事力の前で怯えているのだ。ASEANと中国の外相会議は去る七月二十一日に南シナ海開発の協力推進などをうたった「行動指針(ガイドライン)」を承認した。日本のマスメディアはこぞって前向きの評価を下したが、これは「前進」などと言える代物か。台湾、フィリピン、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、中国によって取り囲まれている南シナ海の複雑な紛争は二〇〇二年に何らの実効性も持たない「行動宣言」でお茶を濁したからこそ、以後九年経ってもいまだに力による衝突が続いているのではなかったか。
 法的拘束力を持つ「行動規範」ができればいいのはどの国にもわかっている。が、強大な軍事力を背景に二国間交渉で相手国を恫喝してきた中国は「行動規範」を望まない。だから、どうでもいい「行動指針」にもったいをつけたうえで同意したのだろう。とりわけ今年になって目立ったのは、自ら・・・