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経済

《企業研究》三井住友銀行

「東電支援」という底なし沼

2011年8月号

 シーシュポスの岩か、賽ノ河原の石積みか─。北山禎介会長や國部毅頭取ら首脳陣にとっては、差し詰めそんな心境だろう。三井住友銀行(SMBC)が「東電支援」という、底なし沼へと嵌り込んだ。
「陥穽」(金融筋)が待ち受けていたのは、東日本大震災から一週間が経過した三月十八日。「このままでは遠からず資金ショートしかねない」として、東京電力の武井優・財務担当副社長から受けた緊急融資要請が発端だ。総額は二兆円。うちSMBCには、主力行として全体の約三割に当たる六千億円もの拠出が求められた。二〇一〇年三月末時点におけるSMBCの東電向け与信の残高は二千九百九億円。実にその二倍以上にものぼる金額だ。

一兆円の大台に迫る与信


「そんな巨資を一気に貸し付けて、本当に回収できるのか」
 関係者によれば、当時、行内にはこう危ぶむ声もしきりだったという。
 当然だろう。大津波に襲われた福島第一原子力発電所では1~3号機の原子炉建屋が爆発・損壊、さらに炉心溶融すら取り沙汰され、巷には東電悪玉論・・・