日本の科学アラカルト11
「ペテン」か「夢のエネルギー」か 着実に進む核融合研究
2011年7月号
問題を糊塗して進められてきた日本の原子力事業の矛盾が噴き出している。燃料(ウラン)の枯渇、原子炉の安全性、使用済み核燃料の処理―。こうした既存原子力発電の諸問題を全て解決し得るのが「核融合」だ。長年研究に取り組みながらも、実用化のめどはまだ遠い先である。しかし、「遅々」としたペースながらも、実現に向けた歩みは進んでいる。
核融合の原理自体は単純だ。軽い核種の原子がぶつかり、新たな一つの原子とエネルギーを放出する。このエネルギーを利用するというのが「核融合炉」である。実際には、原子核に陽子以外に中性子を持つ重水素(デューテリウム・D)と、陽子一つ、中性子二つを持つ三重水素(トリチウム・T)を衝突させて、陽子二個と中性子二個を持つヘリウム(He)と中性子が生じる(D-T反応)。この反応の前後で僅かに質量欠損が生じ、この欠損質量分の熱エネルギーが放出されるのだ。
この単純な「システム」を容易に実用化できない最大の理由は、その「反応条件」にある。原子を衝突させるといっても、その速度が遅ければ原子同士は反発してしまう。たとえばD-T反応の場合、秒速一千キロもの速度でぶつ・・・
核融合の原理自体は単純だ。軽い核種の原子がぶつかり、新たな一つの原子とエネルギーを放出する。このエネルギーを利用するというのが「核融合炉」である。実際には、原子核に陽子以外に中性子を持つ重水素(デューテリウム・D)と、陽子一つ、中性子二つを持つ三重水素(トリチウム・T)を衝突させて、陽子二個と中性子二個を持つヘリウム(He)と中性子が生じる(D-T反応)。この反応の前後で僅かに質量欠損が生じ、この欠損質量分の熱エネルギーが放出されるのだ。
この単純な「システム」を容易に実用化できない最大の理由は、その「反応条件」にある。原子を衝突させるといっても、その速度が遅ければ原子同士は反発してしまう。たとえばD-T反応の場合、秒速一千キロもの速度でぶつ・・・