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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》プルトニウム

この神の領域

2011年7月号

「フクシマ」後、人類にとって最大の不安のひとつになった原子力発電。原子炉のなかで、燃料である「ウラン235」が核分裂反応を続けていくと、プルトニウムが大量に生成されてくる。自然界にはごく微量にしか存在しない元素であり、かつては人工的にしか生まれない元素と考えられてきた。原子力発電と切り離せないプルトニウムは「高速増殖炉(FBR)」によって人類に莫大なエネルギー供給を約束する夢の元素である一方、核兵器という悪夢ももたらす。世界で「プルトニウムの夢」にかけた数少ない国のひとつが日本であり、その夢は今、「フクシマ」で破綻に瀕している。
 東京電力の福島第一原発は1~4号機がメルトダウン(炉心溶融)や圧力容器、格納容器の破損などを起こし、放射性物質を放散し続けている。そのなかで3号機の燃料だけが特別だったことは連日の激しい報道のなかでも、あまり大きくは取り上げられていない。3号機には通常のウラン燃料以外にプルトニウムを混ぜたMOX燃料(混合酸化物燃料)が装荷されていた。使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを軽水炉の燃料として再利用するプルサーマルである。九州電力玄海・・・