「既存不適格物件」の恐怖
都内のビルは大丈夫か
2011年7月号
「都内のビルは大丈夫か!」
三月十一日、大きな揺れが東京を襲ったとき、国土交通省内は、恐怖と不安の入り混じった一種異様な空気に包まれた。
「千年に一度の超巨大地震」に端を発した東日本大震災は、大津波や原発事故に代表される未曽有の広域被害をもたらした。しかし、建築物の被害を見ると、一九九五年の阪神・淡路大震災で五千人超を数えた、建物の倒壊による圧死者は出ていない。この理由は、今回の震源が、陸地から遠く離れており、いわゆる阪神・淡路のような「直下型」ではなかった点にあるのだろう。
そして東京で観測された揺れは強いとはいえ震度五強に過ぎない。ではなぜ、国交省は冒頭のように恐れたのだろうか。
この原因は、「既存不適格」と呼ばれるオフィスビルやマンションなどの旧建築物群の存在にある。
耐震基準などを定めた「建築基準法」は過去、大地震のたびに改正されてきた。中でも七八年六月の宮城県沖地震の発生を受け、八一年六月に行われた同法施行令の改正は最大級だった。そして、これ以前を「旧耐震基準」、以後を「新耐震基準」と明確に区別している。
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