《土着権力の研究》長崎県 有明商事
「海砂」利権で肥大化した新興勢力
2011年7月号
豊かな漁場と多様な水産資源に恵まれた長崎県周辺は、漁場をつぶしながら採取するコンクリート材料「海砂」の一大産地という、相反するもうひとつの顔をもつ。かつて海砂の一大産地だった瀬戸内海をはじめ、漁業に壊滅的打撃を与えるとしていまや全国各地で採取禁止となる中、九州北部に広がる玄界灘では甘い規制が続き、入れ替わるように日本一の海砂採取地となった。現在、海砂生産量の上位四県に周辺の福岡・佐賀・長崎が入っているのはこのためだ。
この長崎の海砂利権を有し、いまや県内に隠然たる影響力を発揮する存在へと成長した長崎の土着権力が、諫早市小長井町に本社を構える「株式会社有明商事」(中村一喜社長)だ。
この海砂は地元の諫早湾干拓事業のほか、後述する全国の大規模公共事業に使われているが、一方でこの海砂採取がもたらす水産資源の破壊によって、玄海灘周辺では「(魚を)獲る漁業」が「(補償を)もらう漁業」へと変貌し、両者が奇妙に共存してしまっている。海砂業界事情通はこう話す。
「西日本の大型公共事業は当然、玄界灘の海砂に頼ることになる。辺野古沖(沖縄県名護市)を埋め立てて滑走・・・