アラブ「君主国」は生き残れるか
同胞団、シーア派と三つ巴の闘い
2011年7月号
激震が続く中東・北アフリカで、守勢に回ってきたスンニ派アラブ君主国が反攻に転じている。獅子奮迅のサウジアラビアが地域の君主国同盟の結成に動いたのだ。一方、エジプト革命で注目されたムスリム同胞団は、六月のトルコ総選挙でイスラム政党「公正発展党」が大勝したのを受けて、さらに各地に浸透する勢いを見せる。過去数年注目された「シーア派伸張」とあいまって、激動の中東では、三つのライバル潮流が争う、新たな地政学が形を現している。
もはや米国は守ってくれない
サウジ王家の支配層は、八十六歳のアブドゥラ国王を筆頭に、ほぼ全員が高齢かつ病気持ちだ。国王は今年一月、チュニジア革命の余波の中、アメリカでの手術から帰国したばかり。六十九歳のサウド外相も、パーキンソン病で「立つのもやっと」とされた。そんな高齢の王族たちが、衰弱した体に鞭打って、中東の首都を駆け回っている。
湾岸の産油六カ国で作る「湾岸協力会議」(GCC)に、ヨルダンとモロッコの二君主国が今夏、新たに加盟が決まったのも、そんな王族外交の成果だ・・・