おぞましいまでの電力会社の政治力が、またもや発揮された形となった。政府は大量の放射性物質を撒き散らした福島第一原子力発電所事故を巡り、被災者の補償に向けた賠償スキームを決定。政府による無限の援助を盛り込んだ事実上の「東京電力救済策」をまとめた。
　賠償スキームは表向き、被災者への遅滞なき補償を確約するためのものだが、「上場企業として東電に引き続きしっかりとした電力の供給を行ってもらいたい」という海江田万里経済産業相の言葉にも表れているように、実態は東京電力のゴーイングコンサーンを前提にした救済策にほかならない。
　東電は今回の賠償スキームにより、今後も補償金確保の名のもとに毎年収益を上げ、生き延びるお墨付きを得、まんまと「電気料金の値上げ」という戦利品まで手にした。このスキームが一部関係者から「トロイの木馬」と称される所以はここにある。放射能漏洩という未曽有の事故を起こしたにもかかわらず現体制の維持を守り抜いたのは、まさに政治力の賜物だ。
　賠償スキームを巡る過程で明らかになったように、電力会社はこの期に及んでもなお盤石の政治力を保持し続ける。電力・・・